長引く寒波を伴った厳しい冬がすぎ、うららかな春になりました。穏やかなこの佳き日、晴れやかに入学宣誓式を迎えた新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。ただいま、学士課程1,985名、大学院課程851名、別科35名、あわせて2,871名の入学許可を宣言いたしました。ようこそ金沢大学へ。咲き誇る桜とともに新入生の皆さんをお迎えできますことを大変嬉しく思います。金沢大学の国际足球_虎扑体育-中国体彩网官网推荐を代表して、心より皆さんを歓迎いたします。
新入生の皆さんの多くは新型コロナウィルス感染症の影響を受けながら中学校?高等学校を過ごしました。ようやく日常が戻ってきた中で、昨年元日に令和6年能登半島地震が発生しました。さらに復旧?復興への歩みを進めていた9月に今度は豪雨災害に直面しました。これら度重なる大きな災害に見舞われた方もおられるでしょう。幾多の試練を乗り越え、難関を見事に突破し、こうして新たな一歩を踏み出そうとしています。皆さんが努力を積み重ね、初志を貫徹したことに敬意を表します。その志を支えてこられましたご家族の皆さまにも心よりお慶び申しあげます。
皆さんが入学した金沢大学は163年の歴史と伝統をもつ総合研究大学です。江戸時代の文久2年(1862年)、加賀藩彦三種痘所の設置を淵源とします。彦三種痘所は「天然痘」の予防接種の普及のために設置されました。旧制第四高等学校等の前身校からの伝統を受け継ぎ、本質的な価値を守りながら、革新を積極的に織り込む気風があります。金沢大学の拠って立つ理念と目標を金沢大学憲章において制定しております。その中で、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を基本理念に掲げてきました。金沢大学には皆さんの知的好奇心を満たし、自ら学び、世界に羽ばたくための環境があります。自主自律の学びを深めながら、分野融合型のリベラルアーツ教育も強化してきました。さらに、金沢大学にはナノ生命科学研究所をはじめとする世界最高水準の研究拠点が複数あります。これらの世界レベルの研究力を礎に、専門分野とともに学際的にも広く知見を取り入れることができます。社会構造や人々の価値観が大きく変化している今こそ、これからの金沢大学での学びが将来のかけがえのない財産になるはずです。国際社会の中核的リーダーである「金沢大学ブランド人材」として日本、世界で活躍できるよう国际足球_虎扑体育-中国体彩网官网推荐一丸となり最大限の支援をします。
現代社会において、多くの課題が顕在化しております。3年を超えるロシアによるウクライナ侵攻は甚大な被害をもたらし、経済安全保障などの重要性を高めました。また、人類の生存基盤である豊かな地球環境の存続は今や深刻な危機に直面しております。我々は国際社会の一員として、持続可能な未来にむけ、なにができるか、常に問い、考えうる解決策を実践し続ける必要があります。そのためにも、多文化を理解する学びと寛容、共生する姿勢が不可欠です。金沢大学では基本理念である「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大切にしております。地域と世界に開かれた視野、視座、視点を涵養するうえで、「国際が日常にある、日常が国際である」ことが重要です。皆さんが国際社会の一員として、金沢大学で学び、大きく成長し、希望ある未来社会に貢献することを心より願っております。
能登半島においては、昨年は大災害に見舞われた1年でした。被災された皆さまの回復、被災地の再建?復興にむけて懸命な努力がなされております。亡くなられた方も多く、命の重みを強く感じます。謹んで哀悼の意を表し、被災された全ての方々に、衷心よりお見舞いを申し上げます。金沢大学は被災地にある国立大学法人、総合研究大学です。被災地ならびに被災された皆さまに寄り添い、アカデミア、公共財として貢献できることを考え続けております。金沢大学では、令和4年5月に金沢大学未来ビジョン『志』を示しました。オール金沢大学で「未来知」により社会に貢献するという「志」を明記しました。「未来知」とは、現在、ならびに未来の課題を探求し、克服するための知恵です。金沢大学は未来知により、未来の新たな価値を創造する大学です。災害に見舞われた能登が有している本質的な価値を守りながら、そこに新たな価値をどのように付加するか考えております。まさに不易流行です。変わらぬ本質を大切にし、挑戦をし続け、伝統と革新を積み上げていくこの「不易流行」に「未来知」の視点は不可欠です。今後も総合研究大学として被災地の再建?復興、地域と世界の発展に貢献していきます。その一環として、今年度から新たな教育プログラムとして、「防災?復興人材特別プログラム」も開設しました。皆さんも金沢大学の学生として、また社会の一員として、一緒に考え、行動していきましょう。未来は自分で創る。まさに、未来をデザインするのは皆さん自身です。
金沢大学は伝統文化が醸成された学都金沢に緑豊かなキャンパスを有しております。この恵まれた環境で有意義な学生生活を過ごすことを是非楽しみにしてください。ワクワクする高揚感、みずみずしい知的好奇心を持って日々を過ごし、果敢に挑戦する情熱を持ち続けてほしいと思います。これから始まる金沢大学での学びのヒントを私から3つお話しいたします。
まず、第一に「人との出会いを大切にする」ことです。
金沢大学は世界の「知」に広く開かれており、熱意を持つ人との多くの出会いやご縁があります。偶然の出会いから一生の付き合いになる方にきっと巡り会えるでしょう。人は人から多くのことを学びます。壁を乗り越える強い志を土台とした「人間力」を高めることにもつながります。私自身も皆さんと同じく期待に胸躍らせて金沢大学に入学しました。40年以上にわたる同級生、仲間との交流はかけがえのない財産です。ぜひ、誠実な心をもって、活気に溢れる学内外の方と積極的に交流してください。令和5年5月15日に金沢大学角間キャンパスにおいて、G7富山?金沢教育大臣会合エクスカーションが行われました。G7各国の大臣、国際機関の代表者が金沢大学を訪れました。学生、教員と未来の教育について語り、皆さんの先輩が「金沢大学ユース宣言」を発表しました。このような出会い、得難い経験は大きな糧となります。金沢大学の学生生活を通じて、偶然の出会いが必然であった、と将来心から思えるような出会いがあることを願っております。
第二に「自分で考える」ことです。
磨穿鉄硯(ませんてっけん)という言葉があります。強い意志をもち、自分で考え続け、学問にたゆまず励む重要性を言い表しております。大学での学びはこれまでとは大きく異なります。自ら学び、自ら育み、世界で必要とされる能力を身に付けることが期待されます。皆さんが将来活躍する社会では模範解答が用意されているわけではありません。変化の著しい実社会では答えがないことがあります。正解も一つとは限りません。今後、皆さんは模範解答のない社会で、未来を切り拓いていくことが求められます。そのためにも現在、さらに未来の課題を探求し、自ら問い、解を見出すことが大切です。まさに金沢大学が大切にしている「未来知」です。仮説を立て、エビデンス(科学的根拠)をもって検証し、妥当性があるか、自分で考えて、考え抜くことです。これこそ大学での学びであり、金沢大学の教育の要です。このような姿勢は必ずや皆さんの人生を支える財産となるはずです。AIなどの技術革新は目覚しいものがあります。これらの技術を活用しながら、最終的に考え、判断、決断するのは皆さん自身です。自分と未来は変えられる、そして未来は自分で創るものとお伝えします。
第三は「他流試合をする」ことです。
他流試合、すなわち異なる文化や環境に身を置いてみてください。卒業までに海外留学や海外研修による他流試合をお勧めします。失敗をおそれず、まず一歩を踏み出してみましょう。見える風景が変わります。新鮮な視点から多様な価値観も生まれ、多くの学びもあると確信します。他流試合が皆さんの未来を切り開くことにつながると考えます。専門外の学び、特に自分とは異なる世界観?文化?価値観を持つ人との交流は新たな発見に満ちているはずです。他流試合を通じて人間力を磨き、深い見識を身につけてください。未来の新たな価値を創造する人材として大きく成長することを期待しております。
改めまして、新入生の皆さんは本日の感激を忘れることなく、高い志、気概をもって、充実した学生生活を送ってください。私は人こそが財産、宝であると信じております。次代を力強く担うのは皆さんです。皆さんが、未来を切り拓き、地域を大切にし、世界で羽ばたくリーダーとして大きく成長されることを期待しております。
ご入学、誠におめでとうございます。
令和7年4月4日
金沢大学長 和田 隆志